語種(和語・漢語・外来語)

語彙を来歴別にグループ分けした概念。「出自」とも言っている。元々あった日本語を「和語」、中国から渡来した日本語を「漢語」、主にヨーロッパから室町期以降に渡来した日本語を「外来語(洋語)」という。どれも日本語の語彙であって、「外国語」ではない。

「外来語」の文字上の意味は「外国から来た語」であろう。そうした概念を表す用語としては「借用語 loan words」がある。借用語に対する用語は「本来語 native words」である。本来語-借用語という対立は、どの言語にも見られる。借用語を「漢語・外来語」と分けるのが、日本語学の見方である。「漢語」を別に立てるのは、日本語の実態に即した分け方と言えるだろう。

現代語の例では、「やど」が和語、「旅館」が漢語、「ホテル」が外来語である。このように、似た意味を持つ語で、来歴が異なる語彙を多数持っているのが日本語の語彙の特色である。

また、現代日本語では、表記との結びつきも強い。和語が「ひらがな」(および訓読み漢字)、漢語が「漢字(音読み)」、外来語が「カタカナ」と関連する。漢字で書かれる和語もあるし、「カタカナで書かれれば外来語である」とは言えないので(生物学における動植物名表記や擬音語・擬態語などがカタカナで書かれることが多い)、イコールの関係ではないが、深く結びついていると言える。

語種は、定義から言えるように、歴史的な観点からの分類である。ところが、漢語の中には、借用ではなく、日本で作られた漢語もある(和語の漢字表記を音読みした「大根、物騒」や、「哲学、神経」などの翻訳漢語)。そこで、音読みの漢語を一括して「字音語」とも言う。また、日本で作られた外来語は「和製英語」(他の言語の場合もあるので「和製外来語」とするのがより汎用的)などと呼ばれる語である。


語種の対照


【金子の見解】まずは日本語ではない「漢語」が意識された。次に漢語ではない「和語」が意識された。そして最後に、漢語・和語ではない「外来語」が意識に昇ったという順番だろう。つまり、漢語→和語→外来語という気づき過程である。ただし、『日国』によると『愚管抄』の「やまとことば」の例が『日葡辞書』の「からことば・からごん(唐言)」に先立っているので(「漢語」は江戸期)、用語としては「やまとことば」(和語)の方が古い。


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