ラング langue


社会的側面から見た言語のことで、言語学が解明すべき研究対象。

言語学の研究対象が「言語」であるのは当然のことである。しかし、言語の定義には種々のものがある。近代言語学は、ソシュールF.de Saussureによって「ラングとされる言語」を研究する学問分野と規定された。言語の使用は、ある特定の個人が行う営みではあるが、他人とコミュニケーションを取るために行うという点で、個人を超えた社会的な広がりを持つ。その点から言うならば、言語は個人に所属しているというよりも、その言語社会(という用語を使うことにする)が共有している実在である。言語の研究とは、そうした意味での言語の体系を究明することであり、一回限りの個々の言語現象(パロール)は、最初の研究対象でないという見解を示した。なお、ラングとパロールを包括する概念として、ランガージュ(language 言語活動)という用語がある。

一般に「日本語はどういう言葉ですか?」という質問は、「アナタ」がどう話しているのかという問ではなく、日本語社会において話されている「一般的な」日本語がどういう言葉かを聞いている。つまり、個人の言語ではなく社会にある言語についての問である。したがって「日本語はどういう~」における「日本語」とは、社会的な実在としての日本語を意味していると考えられる。その点を捉えたのが、ラングの概念である。


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