日本語学における「学」とは「科学science」のことである。科学の本格的な定義は科学哲学に譲るが、おおよそ次のように定義する。
科学とは、人間知識の在り方の一つであり、客観化された知識である。
この定義の意味は、次のように説明できる。
- 人間知識の在り方の一つ……科学的知識を、人間全体の知識knowledgeの中で相対的なものとして位置づけようという言い方である。科学的知識をそのように捉えることで、他のさまざまな知識と相対的な位置にあり、科学的知識だけを絶対なものと主張しない立場を表明している。
- 客観化された……客観化の在り方が科学哲学での中心課題であろう。「反証可能性」という用語で説明される場合もあるが、端的に次のように考える。
・コトバとして外在化された体系的な知識
「コトバ」とは、数式を含む種々の言語とその補助としての図を含む。図だけでは不十分であり、言語化できることが必須である。コトバとして表現された時点で「外在化」と呼ぶことができるが、それを定着させたものが「論文essay」である。種々の科学論文が存在するのは、科学の知識として外在化された姿だからである。
「体系的」とは、断片的ではないという意味である。断片的知識の典型はクイズの知識である。クイズ的知識を貶める必要はないが、科学は常に全体の中での位置づけを意識する。論文に先行研究や今後の課題があるのは、論文で述べたことが、科学全体(当面はその日本語学や文法などの狭い分野)の中でどう位置づけられるかが意識されているからである。