文体 style


文章の何ものかラシサ。

語学における「何ものかラシサ」は、文章のジャンルとの関連で取り上げられることが多い。すなわち、散文と韻文、物語の文体と日記の文体、手紙の文体・説明文の文体など。これに対し、文学における「何ものかラシサ」は、作家や作品と結びつけて論じられることが多い。すなわち、漱石の文体、村上春樹の文体、「火垂るの墓」の文体、「河童」の文体など。

こうした差は、語学・文学が解明する問題の違いに起因する。語学は、多くの人間に共通に見られる言語活動を解明しようとするのに対し、文学は、個々の作家や作品の解明を目指す。したがって、解明しようとする対象の違いが、文体を論じるに際して違った視点を生んでいると言えよう。

なお、ラシサを見出す前提として、Aを選ぶかBを選ぶかの自由がなければならない。文末を「タ止め」とするか、「ル止め」とするかが自由に選択できないなら、そこにラシサを論ずることはできない。古典作品を語学的な文体として研究することの難しさは、比較するべき対象が少ないことに依る。紫式部の文体や「源氏物語」の文体などを、語学として論じることの困難さがそこにある。


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