弁別素性 distinctive feature

単音を特徴付ける要素を分析して得られる素性。単音は音声学的な最小単位である。[b]は確かにそれ以上分けることができない。しかしながら、[p]と比較した場合、「両唇音、破裂音」という点では共通していて、「有声・無声」という点が[b]と[p]を分ける特徴である。その点を捉えて、例えば次のように記述することができる。

各単音の特徴が「調音点・調音法・声・鼻音性」の観点で整理されている。この特徴をロマーン・ヤコブソンが「弁別素性 distinctive feature」と名付けた。[b]と[p]がどこで異なっているかを明らかにした、と言うことができる。

弁別素性を明らかにすることによって、[b]と[p]の違いを明らかにしたと同時に、その共通点・類似点も指摘することができるようになった。例えば、[b]と[m]は、「両唇・破裂・有声」という点で共通しており、鼻音性の有無で対立している。「さびしい」と「さみしい」では、bとm音が交替しているが、なぜbとnではなくmが交替するのかを、二つの音が近いとか、似ているという曖昧な言い方ではなく、「両唇・破裂・有声で共通していて、鼻音性の有無で異なっている」(nの場合は、bと調音点と鼻音性の2点で異なりがある)と説明することが可能になった。その上で課題となるのは、どのような弁別素性を設定するかである。それが現在も探求されているといってよい。

なお、この弁別素性の発想から、次のような意味素性という考えも導いた。

こうした意味分析が常に有効な意味記述ではないし(オス・メスが説明される側と説明する側の両方に出ている)、記述方法にも問題があるが(「動物」ではなく「非人間」、「メス」ではなく「-オス」とするといった問題)、どういう点で異なるのかを明確にできるなど、意味記述の方法として一定の有効性があることも明らかである。


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