語義 word meaning

語(単語)の意味。語は言語記号であるから、ソシュールの言うsignifiantとsignifiéを持つ。語義は、言語記号のsignifiéに相当する。多くの場合、語の「意味」と呼ばれてきたが、「意味」という語は、「文の意味」「文章の意味」などの多義性を持つので、単語の意味は「語義」と呼ぶのが紛れないだろう。

語義のもつ重要な特性は、一般性である。語が、目の前の物にとどまらず、別の物、過去の物にも適用できるのは、語の語義が一つの《物事》だけを指すのではないからである。したがって、語義はかなり抽象的な性格を持ち、言葉で説明することがきわめて難しい。一例として「指」の語義を《手足の先にある5本に分かれた部分》と記述してみるが、語義記述の方法を含めて、語義研究の対象となる。

なお、語義に「中心的な語義 denotation」と「周辺的な語義 connotation」を認めることができる。connotationはニュアンスという呼び方もされるが、語にまつわるさまざまな意味を指す。

denotationであれ、connotaitonであれ、定着した語義が複数あると認められるものが「多義語」である。定着した語義とは、語義を比喩的に使うなどしてその場で拡張して使用したと言えない語義である。例えば、「目」は「ひどい目に合った」など、人体の目以外の用法もある。それは、日本語の中にすでに定着している用法であり、語義といってよい。最初は比喩としてその場で使われたものでも、日本語の中に定着すれば、日本語の語義と言える。

記号イヌの意味(語義)は、《イヌ》である。これは冗談ではない。語義は、ほかに説明できないものであることを端的に示した言い回しである。その上で、より抽象的な説明は可能である。


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